屋根の台風被害を防ぐ方法とは?事前対策のポイントを解説
近年、大型の台風による被害がニュースなどでもしばしば報じられ、不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
「屋根や外壁の一部が飛ばされてしまった」
「カーポートや玄関の屋根が破損してしまった」
「雨漏りに悩まされた」
「業者の手がいっぱいでなかなか修理に来てもらえない」
などの報告も多く、いざというときのためにしっかりと知識を持っておくことや、事前にメンテナンスなどの対策をしておくことの必要性はますます高まっていると言えます。
この記事では、台風被害を抑えるための事前対策や、修理の基礎知識をご紹介します。
1そもそも屋根の台風被害とは?
1-1 特に多い被害とは
ニュースなどでは屋根の一面が大きく破損した様子や、ブルーシートがかかった家の様子などが写されることが多くありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
台風による被害は、最も大きな影響を受けた台風の中心部分以外でもあり、中心から離れた場所では大きな被害はないものの、修理が必要となる部分的な破損などが起こることも少なくありません。
近年の台風の被害で最も多いのは、棟板金(むねばんきん)の剥がれや変形です。
続いて、他所からの飛来物による屋根材や外壁の破損、屋根材の剥がれ、雨樋の破損などの被害があげられます。
●棟板金の剥がれや変形
棟板金とは、屋根のてっぺん部分に取り付けられている板材のことです。
屋根全体を支える重量な役割をしているのですが、屋根の中で最も高いところに取り付けられており、出っ張っているため強風による影響を最も受けやすい部分です。
台風の中心地以外では、この棟板金が強風にあおられて剥がれてしまったり、変形してしまったりという被害が多くあります。
また、瓦屋根の場合は棟板金ではなく、屋根の頂上部分には棟瓦が詰まれています。この棟瓦を支える漆喰(しっくい)の剥がれなどにも注意が必要です。
●飛来物による屋根材や外壁の破損
強風によって他所から飛ばされてきたものが衝突し、スレート板や瓦といった屋根材や外壁の一部が破損してしまうことがあります。
●屋根材の剥がれや浮き
屋根材を取り付けているビスの緩みなどによって、浮きや剥がれが起きてしまうことがあります。
隙間に風が入ることで剥がれがひどくなり、完全に外れて飛ばされてしまうこともあります。
瓦屋根の場合は、瓦がずれたり落下してしまったりすることもあります。
●雨樋の破損
こちらも風による影響を受けやすく、ずれてしまったり一部外れてしまったりすることもあります。
1-2 飛ばされやすい屋根の状態とチェックリスト
被害の原因としては、経年劣化によるものが多くあります。
建てたばかりの家で屋根が壊れてしまうことは稀で、被害に遭った家は、建築から30年以上経っていたといったケースが多いです。
また、もともと壊れている部分があり、それが強風でさらにひどくなってしまったというケースもあります。
とはいえ、建築から30年経っておらず、現状目立った破損もなければ全く安全かというとそうではなく、施工が悪かったり、小さな劣化が原因で被害に遭ってしまったりする可能性もあります。
そのため、築年数と合わせて屋根の劣化状況などをチェックし、必要に応じてしっかりとメンテナンスなどを行うことが大切になります。
注意すべき症状をまとめたので、以下のチェックリストで屋根や外壁の状態をチェックしてみましょう。
屋根に登って状態を確認するのは危険なため、まずは下から目視でわかる範囲で確認してみましょう。
<劣化チェックリスト>
☑屋根材にひび割れやズレが見られる
☑釘が浮いているところがある
☑棟板金に浮いているところがある(金属屋根、スレート屋根)
☑錆や色褪せが見られる
☑漆喰(しっくい)に剥がれているところがある(瓦屋根)
☑外壁にひび割れがある
☑外壁のコーキングにひび割れや変色が見られる
☑雨樋に落ち葉などが溜まり詰まっている
<補足>
●外壁
雨漏りは屋根だけでなく外壁から起こるケースも多いです。お家を外から見てまわった際に、壁に小さな亀裂などがないか、窓枠のコーキング(外壁との隙間を埋めている充塡材の部分)に傷みがないかをチェックしましょう。
●雨樋
雨樋には、降ってきた雨を地上や下水へと排水する役割があります。この雨樋に落ち葉などのゴミがたまっていると排水が滞り、雨水が溢れたり家屋の中へ浸入したりすることがあります。コケが生えてしまっている場合なども同様に注意が必要です。
これらのような症状が見られる場合は、屋根の経年劣化が考えられ、台風による被害にも十分に注意が必要です。
実際に業者に現地調査を依頼して劣化状況を詳しく確認し、必要に応じて破損した場所の部分修理などを行いましょう。
2屋根の種類別・被害を受けやすい場所
1章でも少し触れましたが、屋根には瓦屋根、スレート屋根、ガルバリウム鋼板などの種類があります。
それぞれ特徴が異なるため、大型の台風が来た場合には、屋根の種類によって気を付けるべきポイントも異なります。
屋根材によって台風に強い、弱いなどは様々な意見がありますが、比較的台風に強い屋根材であっても、基本的に何らかの対策はした方がいいでしょう。
1-1 瓦屋根はここに注意!
瓦屋根は和風家屋などでよく使われています。
高い耐久性がありますが、屋根材の中では最も重量があるので、台風の際には落下などを防ぐための十分な対策が必要です。
また、スレート屋根や金属屋根は1枚1枚の屋根材が釘やビスで下地に固定されているのに対し、瓦屋根の場合はそれぞれの瓦が桟木と呼ばれる角材に引っかけられているという構造が基本です。
そのため、強風による影響を受けやすく、注意が必要です。
瓦屋根の対策でのポイントは、①瓦のずれやひび割れ、②漆喰(しっくい)の2点です。
①瓦のずれやひび割れ
瓦のズレやひび割れは、強風による落下の可能性が高く、落ちてきた場所によっては二次災害などを起こす危険性も高いです。
まずは、下から目視できる範囲で大きなズレやひび割れなどがないかをチェックしましょう。
②漆喰(しっくい)
漆喰とは、瓦屋根で棟瓦、丸瓦、のし瓦を固定しているものです。
棟瓦を設置する際、瓦の面と棟瓦の間にできた隙間に土などを入れて固定するのですが、その土に雨や風が直接当たらないように外側から保護する役割を持つのが漆喰です。
正常な状態では外側から白い漆喰が見えますが、劣化していると漆喰が剥がれ落ち、中の土などが見えている可能性もあります。
そういった場合には固定力が衰えているため早急な対策が必要です。
1-2 スレート屋根はここに注意!
スレート屋根とは、薄くて軽いセメントなどが主原料の屋根材を使用した屋根のことです。
瓦屋根に比べると費用を抑えることができるため、近年では人気の屋根材の一つです。
しかし、軽さと、メンテナンス不足による影響を受けやすく、台風が直撃しなかった地域で、強風により屋根の一部が剥がれてしまった、吹き飛ばされてしまったという被害が最も多く寄せられているのもこちらのスレート屋根です。
瓦屋根と同様、劣化には十分気を付ける必要があります。
スレート屋根の対策でのポイントは、①ひび割れ、②棟板金、③釘の浮きの3点です。
①ひび割れの補修
スレート屋根が劣化していると、屋根全体の色あせや、部分的なひび割れなどが見受けられます。
まずは家の下から見える範囲でこれらの異常がないかを確認しましょう。
②棟板金
棟板金とは、1章でも説明しましたが、スレート屋根の頂点に取り付けられている部材です。
屋根の角にかけるカバーの役割を果たしているのですが、経年劣化により一部が浮いた状態になってしまうことがあります。
台風被害として、この棟板金が飛ばされてしまったというものが多く、強風による被害を受けやすい場所であると言えます。
③釘の浮き
屋根材や棟板金を固定しているビスや釘に問題がないかを確認しておくのも大切でしょう。
スレート屋根は一般的に10年に一度程度はメンテナンスが必要と言われているので、建築から10年以上何もしていない場合は一度メンテナンスをしても良いでしょう。
1-3 金属屋根はここに注意!
金属屋根で現在代表的なのは、トタン屋根とガルバリウム鋼板屋根でしょう。
金属屋根といえば軽量で、耐震性が高いのが特徴です。
トタン屋根は錆などの不安はありますが、ガルバリウム鋼板自体は耐久性が高いものも多く、中には20年近くメンテナンスが必要ないというものもあります。
比較的台風に強いイメージをお持ちの方もいるかと思いますが、屋根材の下地部分などは表面の屋根材に比べて劣化が早い場合があるため、瓦やスレートなどと同様に十分に注意する必要があります。
また、一度剥がれてしまうと飛ばされてしまうリスクも高いので注意が必要でしょう。
金属屋根の対策のポイントは、①錆、②棟板金、③釘の浮きの3点です。
①錆
金属屋根の特にトタン屋根などで起こりやすい劣化症状として錆や穴あきがあげられます。
屋根材の経年劣化のサインですので十分に注意しましょう。
また、屋根材が反って一部が浮いているような場合にも強風による被害を受けやすいため、注意が必要です。
②棟板金
スレート屋根と同様に、ガルバリウム鋼板でも棟板金のチェックは必須です。
軽い屋根材であっても飛ばされてしまった場合はいろいろな二次災害の危険がありますので、少しでも不安がある場合には事前に修繕などを行っておくことがおすすめです。
③釘の浮き
スレート屋根同様に、ビスや釘の浮きや緩みにも注意しましょう。
トタン屋根は一般的に7~10年に一度程度、ガルバリウム鋼板は15~20年に1度程度はメンテナンスが必要と言われています。
3事前にやるべき劣化の見極めとメンテナンス
3-1 経年劣化にはきちんとしたメンテナンスを
スレート屋根は10年に一度、トタン屋根は7~10年に一度、ガルバリウム鋼板屋根は15年に一度程度はメンテナンスをした方がいいと言われています。
瓦屋根は頑丈で他の屋根材に比べれば定期的なメンテナンスの手間はかからないと言われていますが、割れやズレといったトラブルの可能性もあるので、20年~30年に一度程度はしっかりと業者に状態をみてもらうのが良いでしょう。
これらの年数に満たなくても、何かトラブルが見られた場合には一度業者に見てもらうのがおすすめです。
屋根は常に外からの雨や紫外線にさらされており、経年劣化は避けられません。
これまでご紹介してきたような劣化症状と、建築からの年数を踏まえて日ごろからメンテナンスを行うことがとても大切です。
経年劣化のメンテナンスとしては、部分修理か全体修理がありますので、それぞれについて以下で詳しく説明します。
3-2 破損した場所の部分修理
瓦の割れ、スレート板の剥がれなどの破損が見られる場合は台風の時期になる前に部分修理をしておきましょう。
部分修理には、傷んだ部分の交換や、棟板金の交換、コーキング材などを使った補修などの方法があります。
全面的な修理は費用の問題で難しい場合でも、部分修理をするだけでも違いますので、トラブルが見られる場合にはできるだけ早い段階で直しておくのが大切です。
屋根に登る必要があるため、コーキングなどのちょっとした作業であっても、基本的には自分ではやらずに業者に依頼するのがおすすめです。
3-3 業者に依頼するメンテナンスにはどんなものがある?
業者が行うメンテナンスとしては、先に説明したような部分修理の他に、葺き替え工事やカバー工法といった全体工事があります。
部分修理であれば、瓦1枚だけの交換といった小規模なものから、棟板金の交換、漆喰の詰め直し、棟瓦の積み直し、釘の打ち直しまで様々で、費用も数万円程度~50万円程かかるものまで様々です。
全体工事は、屋根材や下にある防水シートをすべて新しくする葺き替え工事や、新しい屋根材を全体に被せるカバー工法、塗装工事などがあり、100万以上の費用が掛かることもあります。
以下で主な修理についてご紹介します。費用は業者によっても異なりますのであくまで目安とお考え下さい。
●部分修理
修理内容 | 費用 |
---|---|
瓦・スレート交換 | 2,000~10,000円 /枚 |
漆喰補修 | 3,000~6,000円 /1㎡ |
棟板金交換 | 5,000~8,000円 /1㎡ |
コーキング補修 | 500~1,200円/1m |
釘の打ち直し | 10~30万程度 |
天窓パッキン交換 | 20,000~40,000円/窓 |
天窓交換 | 50,000~100,000円/窓 |
雨樋の清掃 | 20,000~40,000円 |
雨樋の補修(傾き・破損・曲がり・欠落) | 10,000~30,000円/箇所 |
雨樋の全交換 | 150,000~300,000円 |
※足場が必要な場合には15~20万円程度追加で費用が掛かります。
●全体修理
修理内容 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
葺き替え | 既存の屋根材、防水シートなどを一度すべて剥がし、新しいものを設置する工事 | 90~250万円 |
カバー工法(重ね葺き) | 既存の屋根材はそのままに、上から新しい屋根材を被せる工事 | 70~150万円 |
塗装 | 屋根材の表面に塗料を塗る工事 | 30~100万円 |
葺き直し ※瓦屋根のみ | 既存の屋根材を一度外し防水シートや下地を修理してから、元の屋根材をもう一度設置する工事 | 90~150万円 |
ラバーロック工法 ※瓦屋根のみ | 瓦同士をコーキング処理で繋ぎ、強度を高める工事 | 20~40万円 |
修理の詳しい内容については以下の記事でご紹介しています。
4直前にできる対策は?
4-1 セルフでできる対策について
補強工事などは基本的にはプロに依頼するのがおすすめですが、もしも準備が間に合わなかった場合には防水テープやコーキング材を使って自分で対策する方法もあります。
防水テープはホームセンターやネットなどでも購入可能なので、瓦が割れているのに明日台風がきてしまう、というような場合には使用してみてもいいでしょう。
コーキング材も同様に、既に雨漏りしている箇所があり、これ以上悪化すると困るというような場合には応急処置的に使用することもできます。
どちらのやり方も高所作業で危険が伴うこと、失敗するとその後の修理に余計な費用が掛かる可能性があることなどデメリットもありますので、できる限り計画的に補修などはしておくことが大切でしょう。
4-2 台風の直前にやるべきこと
もし台風が来るとわかったら、被害を最小限にするためにも以下のような対策をしましょう。
―台風直前の対策項目―
☑植木やプランターを安全な場所へ移動する
☑犬小屋などを地面にしっかりと固定する
☑物置の扉をしっかりと締め、地面に固定する
☑雨戸を閉めて鍵をしっかりと閉める
☑窓ガラスをテープなどで補強する
☑カーテンを閉める
☑すだれなどは畳んでしまうか、紐で固定する
●対策のポイント① 「屋外」
台風直前に必ずやるべき対策は、屋外に飛ばされそうなものがないかを確認し、安全な場所へ避難させるか、しっかりと固定することです。
ここでは、植木やプランター、犬小屋、物置などを例に挙げましたが、この他にも傘立て、自転車など飛ばされる危険のあるものはすべて注意が必要です。
近年の台風では、トラックが横転するような突風が吹くこともあり、「これはさすがに飛ばないかな?」というものでも念のため確認しておくことが重要です。
●対策のポイント②「窓の周辺」
大型の台風においては、思いもよらないものが他の場所から飛ばされてくることがあります。
他所からの飛来物がぶつかってしまった場合に備え、窓の周辺は十分な対策を行いましょう。
雨戸まできちんと閉めることで、何かがぶつかった時に窓ガラスへの衝撃を軽減することができます。
また、窓の内側からは万が一窓ガラスが割れた場合の飛散を防止するため、テープなどでの補強など行いましょう。段ボールなどをあてて固定するのも効果的です。
4-3 事前に用意しておくと便利なグッズ
台風対策のために用意しておくと便利なものもいくつかあります。
台風の直前でも用意できるものもありますので、ぜひ一度ご自宅にこれらのものがあるかどうか、確認してみましょう。
<自宅にあると便利なもの>
・養生テープ
・ブルーシート
・軍手
・バケツ
・雑巾
・吸水シート
・土嚢袋
軍手やバケツ、雑巾といった日用品も、台風時期には多く使用することを想定して少し買い足しておいても良いでしょう。
養生テープは、ガムテープや紙テープとは異なり、大切な家財にテープ跡などが残らないので災害対策には非常に役立ちます。
また、土嚢は災害時に「用意しておけばよかった」という声が多く聞かれるグッズです。 自宅の近くに河川がある場合や、浸水が心配な場合、屋根の雨漏りの応急処置を行う場合にも大変便利ですので、事前に用意しておくことをおすすめします。
これらのグッズは、台風の接近がわかってから準備できるものもありますが、直前になるとお店の在庫などがあっという間になくなってしまうことも多いので、できることなら事前に準備しておきましょう。
4-4 まとめ
台風対策では、日ごろのメンテナンスと、気になる部分を事前に直しておくことがとても大切です。
台風の直後には業者への依頼が殺到するため、修理まで1ヵ月~半年以上もかかってしまったというケースもあり、雨漏りなどの危険もあります。
まずは簡単にできるセルフチェックを行い、少しでも不安がある場合には一度プロの業者に相談してみるのがおすすめです。
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